池田満寿夫の価値
2021年6月20日
*画像はイメージです。作品ではありません。
以前、ある画廊さんが、「今の若い人は池田満寿夫を知らないんですよ」とおっしゃいました。
一緒にいた女性が、池田満寿夫の絵を見て、「失礼な言い方ですけど、結構お手頃なんですね?」とオーナーに聞いたのがきっかけでした。
そこには、ポップでお洒落な池田満寿夫の版画作品が飾ってありました。
賛否両論ある作家ではあるけれども、40歳以上の人にとって池田満寿夫は「名前くらいは知っている」存在です。
私もちょっと大人ぶって「エーゲ海に捧ぐ」を読んだのを覚えています。
そんな池田満寿夫が、今の若い絵描きにすら認知されていないことにショックを受けたのですが、こうやって作品の価格が下がって、さらに世間の評価も下がっていくという、悪循環に陥っていくんだな、と。
ただ、池田満寿夫を評価する人もちゃんといて、そういう人にとって、池田満寿夫の価値が下がるというのは、所有している本人も辛いと思うんです。
作品の価値は、見る側が何を見出すかです。
そこに温度差があったり、その人のライフスタイルや思想、知識、教養、経験が違うのは当然のことです。
それを周りの評価が変わったから手放す、買わないというのは、なんとも切ないことだと思います。
では、この価値を下げないには、どうしたらいいのか。
難しい問題です。時代の流れもあります。
美術商さんというと、そこをじっと耐えて、時が来るのを待つイメージがあるのですが・・・。
それには持久力が必要ですよね。
でも、考えようによっては、「知られていない」ことを利用することもできるわけです。
池田満寿夫は、ポップな作風が多いですし、今の若い人の目には新鮮に映るかもしれません。
もちろん、良い作品であることは大前提です。
ですが、そもそも「その作品を知っているのか」をまず考えてみる必要があります。
今の若い人が知らないなら、「知ってもらう」工夫をしてみないと、再評価されるかどうかもわからないままです。
良い作家でも日の目をまだ見ていない作家はいます。
一部では評価されているのに、世の中に認知されていない作家もたくさんいます。
だから「伝える」努力をしてもらいたいと思うんです。
作家のためにも、お客様のためにも。
「知らなければ、存在しないも同じ」。
コレクターでない限り、常日頃から情報を蒐集しているわけではないですから。