買えなかった藤の花の絵

2021年5月12日

もう何年も前の話ですが、
ある画廊さんに飾ってあった0号の藤の花の絵がとても綺麗で、
母にプレゼントできたらな、と思ったことがありました。
日本画の中野昌子先生の絵だったでしょうか。


お値段的には手が出ない金額ではなかったのですが、
当時の私にはちょっと厳しくて、、、。
ずっとその絵が心の中に残っています。

 
母にプレゼントしたら、どんな顔をするだろうか?
気に入ってくれるかな?
喜んでくれるかな?
どこに飾ってくれるかな?
そんなことを思いながら、もしまたあの絵に出会えたら・・・
その絵を見て同じように母の顔が浮かんだら・・・
その時は買おう、と。
もう売れてしまっている可能性も高いですが、
おそらく「母の顔が浮かぶ」ことがあれば、
他の絵でも買うと思います。

 
初めてのもの、少しハードルが高いものが欲しいとき、
私たちには、心理的にブレーキがかかります。
理由は色々とあります。
お金がない、
時間がない、
相談しないといけない、など。

 
「当時の私にはちょっと厳しくて、、、」と書きましたが、
無理をすれば買えなくもありませんでした。
母の喜ぶ顔を見たいけれど、
その痛みを負うところまでは行かなかった
ということだろうと思うのです。

 
これってお客側の都合だから仕方がないこと、
と思われるかもしれませんが、本当にそうでしょうか?

  
もし、売り手が商品を本当に素晴らしいものだと思っていて、
その人の人生にプラスになると信じているなら、
少し背伸びをしてでも買ってもらいたいと思いませんか?
もちろん押し売りはいけませんが、
ただモノを売っているのではなく、未来の「喜び」を掴んでもらう、
と考えると、お客さんに頑張って手に入れてもらいたい、と思えるのではないでしょうか。
そして、それを手に入れてもらうためにサポートは惜しまない。
モノを売る、というのは、そういうことではないかと思うのです。

 
欲しいけど、他の理由で迷っているものって、
手に入れてしまうと、それまで言い訳にしていた理由が
どこかへ飛んでいってしまったりしませんか?

  
ちょっと背中を押してもらえたら、当時買っていたかもしれません。
もしくは、背中を押して欲しかった、というのが本音かもしれません。
逆に、背中を押してもらえなかったから、
その絵を手にした喜びを味わえず、今も悶々としている、
といってもいいかもしれません。
お客側の勝手な言い分ですが(笑)!

 
売り手には、そういった責任も
実はあるのではないでしょうか?