安宅コレクションカタログ

古美術に開眼したきっかけ 安宅コレクション

2021年6月10日

前回、古九谷の洗礼を受けたお話をしましたが、
その繋がりで、私が古美術に開眼した時のお話をしたいと思います。

 
子供の頃、浮世絵が好きではありませんでした。
もっと言うと、日本美術が好きではありませんでした。

アメリカで幼少期を過ごしたこともあり、西洋文化(特にアメリカ)に憧れ、日本っぽいものを極端に嫌っていた時期がありました。

現地校の美術の先生に、浮世絵のカタログをプレゼントしたら、すごく喜んでくれて「何がそんなに良いんだろう?」と思っていました。
(この時点でもう画家になる才能がなかったように思います。笑)

 
美術の勉強をするにつれ、セザンヌやマティスから抽象表現主義、シュポール/シュルファスの「絵画とはなんぞや」の流れに魅せられると、日本の美術が一気に流れ込んできました。北斎や歌川広重、長谷川等伯や琳派、昭和初期の日本画家や洋画に魅せられて行きました。

一度めの洗礼です。180度、日本の美術に対する見方が変わりました。
まあ、ここまでは大体の美大生が通る道ではないでしょうか。笑

 
私は東京造形大学を卒業後、Bゼミで現代美術を学んでいました。

フォークアートには興味がありましたが、正直、博物館にある中国の陶磁器など、いわゆる鑑賞ものの古美術品をじっくり見たことがありませんでした。
当時、絵画の古典には魅了されて行きましたが、中国の壺は古臭いものにしか見えず・・・。

  

  
そんな時、三井記念美術館で「安宅英一の眼−−安宅コレクション」をたまたま見に行きました。
なぜ見に行こうと思ったのか覚えていませんが、ちょっと見てみるか、くらいの気持ちだったと思います。

 
もうそこでは、見るもの見るもの素晴らしく、新しく映って「こういうことだったのか・・・。」
と、言葉にならない納得感や無知だった悔しさが入り混じった感動を覚えました。

  
特に高麗青磁に魅せられました。
中国陶磁も、こんなに垢抜けたものだったのか、今まで何を見てきたんだろう、と愕然としたのを覚えています。
昔から好きではなかった唐三彩は、数は少なかったものの、こんなにも品のよいものだったのか、と。

 

 
2度目の洗礼です。笑
古美術に対する見方が180度変わりました。

 
人は人生の中で、何度も気づきがあると思うのですが、その振り幅が大きければ大きいほど、その世界に対する愛着が湧いてきます。
大嫌いだったものが大好きになったり。食べ物でもよくありますよね。


知らないままだったら、と思うと、全く人生が違っただろうな、と思うのです。
安宅コレクションのような凄い作品を買うことはできないけれど、おかげで、それらを思い浮かべながら、自分が買える範囲のものを探ることができます。


こんな風に、まだ見ぬお客様に開眼してもらう。凄い世界があることを知ってもらう、ということをもっともっと美術商さんにしてもらいたいです。