『アートに学ぶ6つの「ビジネス法則」』

『アートに学ぶ6つの「ビジネス法則」』

2021年5月08日

 『2007年に森ビルが東京、ニューヨーク、ロンドン、パリ、上海の五都市で行った「国際都市アート意識調査」によれば、(中略)
「何をもとめて美術館に行きますか」という問いかけをした結果、パリでは「教養」ロンドンとニューヨークでは「非日常的な刺激」という回答が多かったのに対し、東京では「気分転換」という回答が多数を占めました。(中略)
これは、日本の美術教育が「感じたことを言葉にして楽しむ」ことを教えず、「それぞれが目で見て漠然と感じる」ことばかりを教えてきた弊害ではないかと思います。』
 
翠波画廊さん(株式会社ブリュッケ)の社長、高橋芳朗氏の「アートに学ぶ6つの『ビジネス法則』(サンライズパブリッシング)を読んでいて印象に残った内容です。
私も子供時代はアメリカで過ごしたことから、美術に対する「教育の違い」を強く感じていて、自分も含め、言語化することが苦手な日本人の根本的な原因は「教育による自己肯定感がないこと」にあるな、と。
 
『日本のアート産業に関する市場レポート2019』(文化庁/一般社団法人 アート東京)では日本に限った調査でしたが、やはり「美術品鑑賞のプラスの効果」で「リラックス・気分転換・ストレスの軽減」がいまだ一番多かったですね。
 
また同著で高橋氏は、
『フランスでは小学校まで美術の成績はつけないそうです。
 そして、授業では実際に美術館へ行って絵を見ながら、どう感じたかを話しあったり、その絵を見て思ったことを自分だったらどんな風に表現するか、それを絵にしてみましょうといって絵を描かせたりするそうなのです。
 そのような授業を通して、アートに興味を持ってもらうこと、好きになってもらうことを目的とした教育が行われているのです。』
とも述べている。
 
 
「アートをビジネスに活かす」ために、ビジネスマン向けに書かれた本ですが、以前からマーケティングに長けている画廊だな、と思って興味深く拝見していました。読んでなるほど、マーケティングをきちんと勉強されて、実直に行ってきたんだな、と嬉しくなりました。この本の構成自体がマーケティングの一つとして作られているので、マーケティングとアートに興味のある方はぜひ。
 
ちなみに、「マーケティング」というと、「ものを売る方法」とか「ブランディング」をイメージすると思いますが、本来は「お客様の思考」を理解することが基本で、こちら側の「売りたい」「知ってほしい」が先行するものではないんです。
「売れる」「知ってもらう」はあくまでも結果。
それもこの本にわかりやすく書かれているな、と思いました。
同業者はおまり読みたがらないかもしれないけど(笑)おすすめです!